レシピ R3

監査法人からの質問に回答ドラフトを作る

監査法人からの質問リストに対し、会計方針メモなどの社内資料だけを根拠に回答の下書きを作ります。資料にないことは答えず、「誰に何を確認するか」を一覧にします。

基本情報

業務領域
監査対応
所要時間の目安
Lv1は約15分、Lv2は登録に約20分、Lv3は準備に約30分
情報の時点
2026年10月時点(公式情報の確認日:2026年10月12日)

使う前と、使った後

使う前

質問ごとに過去の資料をひっくり返して根拠を探し、回答を一から書く。確認漏れに気づくのは提出の直前。

使った後

根拠の箇所つきの回答案と「資料にない質問」の一覧が最初に出るので、確認の段取りを早く始められる。

練習データとひな形

練習データはすべて架空です。実在の会社・取引とは関係ありません。

Lv1 チャットで試す

質問リストと会計方針メモを添付して、プロンプトを貼ります。このレシピでいちばん大事なのは、資料に書かれていないことを、Claudeに答えさせないことです。

用意するもの

コピーして使えるプロンプト

あなたは経理部のアシスタントです。監査法人から届いた質問リスト(r3_shitsumon_list.csv)に対して、会計方針メモ(r3_kaikei_hoshin_memo.txt)だけを根拠に、回答の下書きを作ってください。

【手順】
1. 質問の件数と、受け取った資料の名前を最初に教えてください。
2. 質問ごとに、会計方針メモの中から根拠になる箇所を探してください。
3. 質問ごとに、次のどれかに判定してください。
   ・回答できる:メモに答えがある
   ・一部回答:メモに一部だけ答えがある(足りない部分を書く)
   ・資料に記載なし:メモに答えがない
4. 次の列の表にしてください。
   番号/質問(要約)/判定/回答の下書き/根拠(メモの箇所)/確認が必要なこと
5. 最後に、判定ごとの件数を書いてください。

【ルール】
・会計方針メモに書かれていないことは、一般論や推測で補わないでください。
・「資料に記載なし」の質問は回答を書かず、誰に何を確認すればよいかを書いてください。
・金額・日付・件数は、メモの表記どおりに書いてください。
・回答の文体は「です・ます」にしてください。

期待される出力の例

判定と根拠の箇所は、次のとおりになるはずです(回答の文章は毎回少し変わります)。

質問の件数:8件/資料:会計方針メモ(2026年3月期)

番号質問(要約)判定回答の下書き根拠確認が必要なこと
Q01収益の認識時点回答できる製品の販売は、顧客が検収した時点で収益を認識しています。当期に変更はありません。メモ 1.(1)(3)―
Q02棚卸資産の評価減回答できる評価減の額は1,240,000円です。1年以上動きのない滞留在庫38品目のうち、販売見込みのない12品目について計上しました。メモ 2.(2)(3)―
Q03貸倒実績率の算定期間資料に記載なし―(メモ 4.(1) に算定期間の記載なし)算定に使った期間を、引当金の計算資料で確認する
Q04賞与引当金回答できる支給見込額のうち当期に負担すべき額を計上しています。期末は12月〜3月の4か月分、6,520,000円です。メモ 4.(2)―
Q05減価償却方法の変更回答できる当期に減価償却方法・耐用年数の変更はありません。メモ 3.(4)―
Q06新システムの資産計上回答できる4,800,000円をソフトウェアとして計上し、利用可能期間5年の定額法で2026年1月から償却しています。メモ 3.(3)(5)―
Q07期日経過の売掛金資料に記載なし―なし売掛金の年齢調べ(期日経過の一覧)を作成し、回収見込みを営業部に確認する
Q08後発事象資料に記載なし―なし決算日後の重要な事象の有無を、経理責任者・関係部署に確認する

判定ごとの件数:回答できる 5件/一部回答 0件/資料に記載なし 3件

Q03 のように「貸倒実績率を使う」とは書いてあるのに「期間」が書いていない質問で、Claudeが「一般的には過去3年の平均です」などと補ってしまうことがあります。これは誤りの典型例です。

Lv2 プロジェクト・スキルで定型化

監査対応は、同じ資料(会計方針メモ、決算資料、過去の回答)を何度も参照します。プロジェクトに資料を置いておくのがいちばん効果的です。

方法A:プロジェクトに資料と指示を登録する

  1. 「+ 新規プロジェクト」から、期ごとにプロジェクトを作ります(名前の例:「2026年3月期 監査対応」)。
  2. プロジェクトナレッジに、根拠になる資料を追加します(会計方針メモ、決算資料、昨年の監査での回答など)。
  3. 「プロジェクト指示を設定」から、下の文章を貼り付けて保存します。
  4. 質問リストが届いたら、プロジェクトの中で新しいチャットを始め、質問リストを添付して「回答の下書きを作ってください」と書きます。
このプロジェクトでは、監査法人からの質問に対する回答の下書きを作ります。

・回答は、プロジェクトナレッジにある資料に書かれていることだけで作ってください。一般論や推測で補わないでください。
・回答ごとに、根拠にした資料の名前と箇所(章・項目番号)を必ず書いてください。
・資料に答えがない質問は「資料に記載なし」とし、回答を書かずに、誰に何を確認すればよいかを書いてください。
・金額・日付・件数は、資料の表記どおりに書いてください。
・出力は「番号/質問(要約)/判定/回答の下書き/根拠/確認が必要なこと」の表にしてください。

プロジェクトのファイルは、1ファイル30MBまでです(公式ヘルプより)。有料プラン(チームプランを含む)では、資料が多くなると、必要な部分を検索して使う仕組み(RAG)が自動で有効になります。

方法B:スキルとして登録する

  1. スキルのひな形 kansa-kaitou.zip をダウンロードします。
  2. 中の SKILL.md を、自社の資料名や回答の書き方に合わせて書き換え、zip にまとめ直します。
  3. スキルを管理する場所で「+」→「+ スキルを作成」→「スキルをアップロード」の順に選び、アップロードします(詳しくは R1のLv2 を参照)。

スキルには「回答の作り方のルール」を、プロジェクトには「その期の資料」を置く、という使い分けもできます。

Lv3 Claude Codeで自動化

資料がフォルダにまとまっている場合は、Claude Code に資料のフォルダを読ませて、回答案のファイルを作らせることができます。PDFの資料も、Claude Code はそのまま読めます(10ページを超えるPDFを分けて読むには、パソコンに「poppler」(pdftoppm)という道具が必要です。公式ドキュメントより)。

フォルダ構成の例

監査対応_2026年3月期/
├── CLAUDE.md                     … 回答のルール(根拠のない回答をしない など)
├── 資料/
│   ├── r3_kaikei_hoshin_memo.txt   … 会計方針メモ
│   └── (決算資料、過去の回答 など)
├── 質問/
│   └── r3_shitsumon_list.csv       … 監査法人からの質問リスト
└── 回答案/                        … 結果の出力先

Claude Codeへの指示文の例

まず計画モード(ファイルを変更せずに、作業の計画だけを示すモード)で次のように頼み、どの資料を読むつもりかを確かめてから実行させると安心です。

質問/r3_shitsumon_list.csv の質問に対して、資料/ フォルダの資料だけを根拠に、回答の下書きを作ってください。
CLAUDE.md のルールに従い、結果は 回答案/ に次のファイルで出力してください。

1. kaitou_draft.md:質問ごとの回答の下書き(判定、根拠の資料名と箇所、確認が必要なことを含む)
2. kakunin_list.md:「資料に記載なし」「一部回答」の質問について、誰に何を確認するかの一覧

資料/ と 質問/ のファイルは書き換えないでください。

CLAUDE.md には、Lv2のプロジェクト指示と同じルールを書いておきます。

出力されるファイルの例

回答案/
├── kaitou_draft.md   … 回答の下書き(8問)
└── kakunin_list.md   … 確認が必要な3問の一覧

kakunin_list.md の例:

# 確認が必要な質問(3件)
- Q03 貸倒実績率の算定期間 … 引当金の計算資料を確認(経理部)
- Q07 期日経過の売掛金 … 売掛金の年齢調べを作成し、回収見込みを確認(経理部・営業部)
- Q08 後発事象 … 決算日後の重要な事象の有無を確認(経理責任者・関係部署)

確認が済んだら、その結果を資料フォルダに追加して、もう一度回答案を作らせます。回答案と確認の記録を残しておくと、翌期の監査対応の資料にもなります。

どのレベルでも必ず行う

自分で確かめること

Claudeの出力は、そのまま使わないでください。経理の担当者として、次の点を自分の目で確かめてから使います。

  1. 質問の件数と、回答の件数が一致しているか

    練習データの質問は8問です。回答の表が8行あり、番号の抜けや重複がないかを確かめます。

  2. 回答の根拠が、資料に本当に書かれているか

    回答ごとに書かれた根拠の箇所(例:会計方針メモ 2.(3))を開き、回答の内容と一致しているかを1件ずつ確かめます。金額・日付・数量は特に注意して見比べます。

  3. 「資料に記載なし」の質問に、Claudeが一般論で答えていないか

    練習データでは、Q03(貸倒実績率の算定期間)、Q07(期日経過の売掛金)、Q08(後発事象)の3問が「資料に記載なし」になるのが正解です。ここに「一般的には〜」といった回答が入っていたら削除します。

  4. 「確認が必要なこと」を、誰に確認するか決めたか

    資料に記載がない質問は、担当部署や上長に確認してから回答します。確認した内容と確認した相手は、記録に残します。

  5. 提出前に、責任者が内容を確認したか

    監査法人への回答は、会社としての正式な回答です。Claudeの下書きをそのまま送らず、経理責任者の確認を受けてから提出します。

注意点

入力してはいけない情報

  • 会社の規程やルールで入力が認められていない情報(まず社内のAI利用ルールを確認してください)
  • 監査契約や守秘義務の取り決めで、外部サービスへの入力が制限されている情報。不明な場合は、監査法人や社内の責任者に確認します
  • 個人名が入った資料(従業員の評価、個別の給与など)

チームプランでは、初期設定のままなら、入力した内容がAIの学習に使われることはないとされています(自分で許可した場合や、フィードバックを送った場合を除く。Anthropic の商用利用規約・公式ヘルプより)。それでも、会社のルールで認められた情報だけを入力してください。

よくある失敗

  • もっともらしい一般論で答えてしまう
    「資料に書かれていないことは答えない」「根拠の箇所を必ず書く」をプロンプトに入れます。根拠の箇所が書かれていない回答は、信用しないようにします。
  • 資料の古い版を渡してしまう
    会計方針メモや決算資料は、ファイル名に期と版(例:2026年3月期_確定版)を入れて管理します。
  • 金額を計算し直してしまう
    回答の金額は資料の表記どおりにさせ、計算し直させないようにします。計算が必要な質問は、別に計算して確かめます。
  • 質問の意図を取り違える
    質問があいまいなときは、回答を作る前に監査法人へ質問の意図を確認します。Claudeには「質問があいまいな場合は、その旨を書く」と指示しておきます。

確認した公式情報

このページの説明は、次の公式情報で確認しました。法令や会計・税務の制度も、改正されることがあります。Claude の機能や制度は変わることがあるため、使う前に最新の情報を確認してください。

記事名URL確認日
Anthropic 商用利用規約(顧客のデータで学習しないこと:注意点の欄の根拠)https://www.anthropic.com/legal/commercial-terms2026年10月12日
What are projects?(プロジェクトとは)https://support.claude.com/en/articles/9517075-what-are-projects2026年10月12日
プロジェクトを作成・管理するにはどうすればよいですか?(日本語版:プロジェクトナレッジ・プロジェクト指示)https://support.claude.com/ja/articles/95191772026年10月12日
Retrieval augmented generation (RAG) for projects(資料が多いときのプロジェクトの仕組み)https://support.claude.com/en/articles/114730152026年10月12日
Upload files to Claude(アップロードできるファイル・プロジェクトのファイルの上限)https://support.claude.com/en/articles/8241126-upload-files-to-claude2026年10月12日
Claudeでスキルを使用する(日本語版)https://support.claude.com/ja/articles/125121802026年10月12日
Claude が不正確または誤解を招く回答を提供しています(日本語版)https://support.claude.com/ja/articles/85251542026年10月12日
Claude Code の権限モード(計画モードなど)https://code.claude.com/docs/en/permission-modes2026年10月12日
Claude Code のツール一覧(PDF・画像の読み込み)https://code.claude.com/docs/en/tools-reference2026年10月12日